【感想】うつ病九段のあらすじと解説を元うつ病がまとめました!

将棋盤と文字

栗山マリ
栗山マリ

この記事では「うつ病九段」という本の魅力についてご紹介します!
※一部ネタバレを含みますので未読の方はご注意下さい。

「体が突然動かなくなった」「不安な気持ちで一杯になる」

人気プロ棋士である先崎学九段にある日うつ病が襲い掛かりました。「うつ病九段」は約1年に渡るうつ病との戦いを記した先崎九段の闘病エッセイです。

なぜうつ病になったのか、どのような苦悩があったのか、そしてどのようにうつ病を克服したのかが詳細に記録されています。将棋が好きな方はもちろん、うつ病について知りたい方にもオススメできる一冊です。それでは本書の魅力について解説していきます。

本記事の内容/この記事はこんな人にオススメ

・うつ病の体験談を知りたい人
・周りの人がうつ病になってしまった人
・将棋が好きな人

基本情報

先崎九段とは

先崎九段は青森県出身のプロ棋士で17歳のときにプロデビューを果たしました。1990年にはNHK杯という持ち時間の短い対局において羽生九段に勝利し優勝しました。その後、2017年の7月にうつ病発症し翌2018年に復帰を果たしました。ちなみに羽生九段とは同級生で小学生の頃から将棋を指していました。Twitterから画像を拝借しました。左が先崎九段で右が中村七段です。(段位は2020年12月時点のものです。)

人物像

ニックネームは「せんちゃん」と呼ばれており、分かりやすい解説が好評で多くのファンから慕われています。将棋に関連する執筆活動や将棋マンガの監修なども勤めており幅広く活躍されています。 また、将棋だけではなく麻雀も上手く雑誌の企画などの大会にも出場された経験があります。下の画像は先崎九段が執筆した「将棋指しの腹のうち」という本です。プロ棋士の食事についてまとめられた内容なので興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか。

https://twitter.com/CHICAUMINO/status/1222409925772464128

うつ病になった経緯

不正ソフト使用疑惑事件

プログラムのイメージ図

うつ病になったと思われる要因の一つに不正ソフト使用疑惑問題があります。あるプロ棋士が対局中にスマートフォンを用いてカンニングを行ったのではないかという疑惑が浮上し、一時世間を巻き込む騒動となりテレビなどでも取り上げられました。詳細な調査を行った結果、不正をしたという証拠は現れず事件は幕を下ろしました。

この事件をきっかけに将棋界はネガティブな話題に包まれて、先崎九段は対応に追われて心身共に疲労したと推測されます。

将棋ソフトの発展
 近年の将棋ソフトの発展は目覚ましく、2017年には当時の名人である佐藤天彦九段に二連勝しました。ソフトの実力が向上したことと上記の事件を受け、日本将棋連盟では対局中に電子機器の持ち込みを制限することになりました。

将棋マンガへの貢献

将棋へのネガティブなイメージを払拭するべく、先崎九段は今まで以上に将棋関連の執筆活動へ取り組むようになりました。 その中でも代表的なものに「三月のライオン」という人気将棋マンガの監修があります。原稿やイベント出演、取材など様々な対応を精力的に行いました。将棋の活動だけでも大変なのに、マスコミ対応や将棋マンガの監修もされていて非常に忙しい毎日を送られていました。

プロ棋士の生活
 
プロ棋士は対局のない日には研究会と呼ばれる数人のグループによる将棋の対局や研究を行うことが一般的です。近年の将棋はソフトの普及等もあり研究が非常に盛んに行われております。少し前に流行した戦法がもう通用しなくなるといったことがよく起こるため日ごろの研究は必要不可欠と言えます。
https://twitter.com/CHICAUMINO/status/1200042926656503810

うつ病の発症

具体的な症状

病院のカルテ

忙しい毎日を送っていたある日、先崎九段にうつ病の症状が現れました。まず最初に頭が重たくなり、その後睡眠障害や強烈な不安に襲われるといった状態が続きました。 その後、ひどいときには活字が読めなくなり将棋を指すどころではなくなってしまいました。

うつ病と本の関係
 なぜうつ病になると活字が読めなくなるのか疑問に感じる方もおられると思います。脳は心の病気であるというイメージがありますが、実際には脳の病気であるという考え方が医学的には正しいです。私も活字が読めなくなった経験があるのですが、脳がうまく文字を認識できずに何て書いてあるのか理解できなくなります。うまく文章が読めなくなった場合は要注意です。

将棋への影響

将棋の駒の配置

先崎九段は対局中に集中できなくなるだけではなく、あらゆる決断を下すこともできなくなりました。当然対局には勝てない日が続き、とうとう休場することを余儀なくされました。 今まで一度も休場したことがなく休むことには抵抗がありましたが、家族の説得もあり入院することとなりました。うつ病の治療中にも将棋を指されていましたが、症状が悪いときにはアマチュアにも苦戦する状態が続きました。

うつ病の克服

入院生活

病院内の様子

入院してからは規則正しい生活を送ることでうつ病と向き合いました。最初こそ感情を失った状態が続きましたが、時間が経過するたびに少しずつ喜怒哀楽の感情を取り戻すようになりました。その当時、将棋界では藤井二冠の登場で将棋ブームが到来していましたが、先崎九段が知ったのは退院してからだったようです。退院後は近所を散歩したり図書館へ通ったりして少しずつ体調が回復していきました。

仲間の存在

うつ病を克服する上で欠かせない存在であったのが同じプロ棋士の仲間です。入院後や退院後に一緒に将棋の練習を行う仲間から心配の声がたくさん届きました。 一時はアマチュアにも苦戦するぐらい将棋の実力が落ちていましたが、仲間と共にトレーニングすることによって実力を取り戻していきました。

また、後輩がタイトルを獲得するといった出来事もあり、現役復帰に強い熱意を抱くようになりました。「何よりも将棋が弱くなることは許せなかった」と本書で語られているのが印象的でした。

元うつ病が感じたこと

本の内容

電子書籍のリーダー

うつ病の体験談を記した本は少なくありませんが、うつ病を発症した際の具体的な症状であったり精神科医側の視点から書かれた本は貴重で参考になる部分が多くありました。(先崎九段の兄は精神科医であり発症当時から精力的にサポートを行っていました。) 「人間は不思議なことに誰でもうつ病になるけど、不思議なことにそれを治す自然治癒力を誰でも持っている」というお兄さんの言葉に代表されるように、本書にはうつ病に関する解説が随所にされており単なるエッセイ本にとどまらずうつ病を理解する本としても完成度の高い一冊と感じました。

本書を読んだ感想

元うつ病である私の感想ですが、うつ病を理解するための入門書として多くの方に読んでほしい一冊だと思いました。「うつ病にとって散歩は薬のようなもの」という記載はまさに私も精神科医の先生に言われた言葉でした。 また、「『待っています』という一言が嬉しかった」という風にどんなことを言われたら嬉しかったのかが記載されていたので家族や友達がうつ病になってしまった人にもオススメしたい一冊です。

うつ病に関する本に共通して書かれていることですが、うつ病は脳の病気です。決して一時的な症状であると過小評価したりしてはいけないと改めて認識しました。

おわりに

うつ病九段の魅力について紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。この記事をきっかけに本書に関心を持たれた方はぜひ手に取ってみて頂けると幸いです。また、2020年12月20日からNHKでドラマ化されるためそちらも要チェックです。最後までご覧頂きありがとうございました!

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